二つのキャッチコピー
※僕はキャッチコピーの専門家ではない。文章表現の専門家でもない。
数か月前のことになるが、マイクロソフトのsurfaceのキャンペーンとしてDive to 沼というものがあった。その内容はどうでも良いので説明を省く。
本題はキャッチコピーである。キャンペーンの広告を、僕は電車の中で見つけた。動画としてもあるようだ。そしてキャッチコピーとして
「型にハマるな、沼にハマれ。」
と書かれていた。
型にハマるな。これは大した文章ではない。内容自体、言ってしまえば言い古されている。だから、じゃあどうすればいいのっていうアンサーがこの後にくる。
「沼にハマれ」
いや、定型の表現じゃねえか。お前の方が型にハマってるよと僕は即行でツッコんだ。それじゃ説得力のかけらもないよと。
さらに言えば、「型」と「沼」になんの関わりもない。要は韻を踏んでいるだけで、前半部分が全く生きていない。ゼロである。後半の「沼にハマれ」だけで言いたいことが完結している。それ、得意げにダジャレ言ってるオッサンと同じでは?
もう一つ。よく似たキャッチコピーを、我々、控え目に言っても日本人の半数以上は見たことがある。サッポロビール黒ラベルのキャッチコピー。
「丸くなるな、星になれ」
マイクロソフトさんは踏み台で、僕はこっちを推したいがためにこの文章を書いた。
見れば見るほど似ている。実際に両方を併記してみたら、なおさら。「~するな、じゃあどうする」構文。その前半も、既成概念に囚われるなという意味で一致している。パク…と言われてもしょうがないと思う。僕は平和主義者なので断言はしない。
当然サッポロビールは昔から、推定で2010年から使っている。妻夫木聡さんが大人のエレベーターに乗り始めたとき…小学生の僕はテレビを見ていなかったから本当は分からない。要するに逆ではないよと念のため。
ということで順番は逆だが、型沼がクリアできなかった壁を越えられているか検証しよう。
「星になれ」
うーん。僕に死ねとでも?松岡修造が「もっと星になれよ!」と言っても意味は通じないだろう。
丸、星はいずれも図形である。星は単純に図形的意味において尖っている。それを踏まえた上で、「星」にカタチだけじゃなく色をつけた、つまり輝く星を導入したである。見事に前半を活かしている。前半が無ければ…というのは先述の通りで、これで証明終了だろうか。
ダブルミーニング、それって結局ダジャレじゃねーかと思う人もいる。それは事実である。しかし、ダジャレ的要素を省いたとしても立派に文章的美しさ、キャッチコピーとして見る者を引き付ける力は残っている。むしろダジャレ要素は言ってしまえばどうでも良い。肝心なのは大事な要素があるかであり、だからそれを見失った型沼に難癖をつけたわけ。